「女子はスタートに着いてください」



係員の人にそう言われ、わたしはユニフォームの上に着ていた半袖を脱いだ。



「吉井さん、がんばって」

「うん。高瀬くんも、ね」



そう返しながら、ちらっと中津くんのことを見た。


高瀬くんに背中を押され、わたしは4レーンのスタブロの設置をした。

周りはみんな速い人ばかり。
名前は知らないけど、お互いにライバル心を抱いているのは、たしか。


“ぜったいに負けたくない”って、みんなが思っている。


一度、スタート練習をしてから、スタブロの後ろに並ぶ。


これまでにないくらいの緊張感。
胸のドキドキが、うるさいくらい。


ゴールを見据えていると、「決勝進出者を紹介します」というアナウンスが会場に流れた。