でもなんか、まだ沙莉の顔を見ても平気なような、心の準備ができていなかった。



「かすみん? 行かないの?」

「あ、行くよ」

「どうしたの、朝からぼーっとして」

「ううん、なんでもない!」



つきあっているわけじゃないし、まだ言わなくてもいいよね。


なんだか罪悪感で胸がいっぱいになっているけれど、言うのもおかしい気がしてきた。

だって、嫌味みたいじゃん……。



そのあと、沙莉といつもどおりたわいのない話をしながら教室へと向かった。

胸がズキズキと鳴るのをしらないフリをして、それを隠すように笑って。



「好き」って想いを伝えたのはいいけれど、それでだれかが傷つくなんて、昨日は少しも考えていなかった。







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