「わたし、やっぱり陸上が好きだから、がんばろうと思うんだ」

「そっか。 お父さんが手助けをしてくれると、いいね」

「うん。お父さんならきっと……そうしてくれるはずだよね」



空を見上げながら、そうつぶやいた。

吐き出した白い息が、ふわっと空に向かって消えていく。



そのあと、自転車を取りに行く高瀬くんを待って、自転車を押す高瀬くんと歩いて家に向かう。



その途中だった。



「俺は吉井さんが走ってる姿、好きだよ」



高瀬くんは、なんの気なしにそう言ってくれたんだと思う。

だけど頬が熱くなって、心臓の鼓動が速くなっていくのが、自分でもわかった。



「あ、ありがとう……」



なんて返せばいいのかわからなくて、ただそう言った。



やっぱりわたし、高瀬くんが好き。
高瀬くんのことも、諦めたくない。


「好きじゃない」なんて沙莉には言ったけど、本当はずっと高瀬くんが好き――。


もう自分の気持ちに、うそは吐きたくない。






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