「吉井さん、なるべく早くね」
「うん!」
優しく笑う高瀬くんはそう言って、一足先にグラウンドへと戻って行った。
わたしも、急がなきゃ。
もう二度と会えないわけじゃないし、会いに行こうと思ったらいつでも会えるんだ。
最後の別れとかじゃないもんね。
「そうだ、華純」
「ん?」
「バイトは辞めなよ」
「えっ? ……どうして?」
歩夢がそのことを、なんで知ってるんだろう。
……って、お母さんから聞いたに決まってるよね。
「俺が父さんにお金のこと話すから。 華純は陸上に集中しなよ」
「でも」
「母さんは、華純にはなにも気にせずに陸上をやってもらいたいって」
そう言った歩夢がなぜか、ちょっとだけオトナに見えた。
わたしが見上げるくらいに背が高くなって、声も低くなって。
……それに、甘えん坊だったくせに、頼りになるし。



