「これ、使って」

「え、でも……」

「みどり病院は、ずっとまっすぐ行けば、すぐ着くと思うよ」

「……ありがとう!借りるね!」



ここでごちゃごちゃ話してるひまはないと思って、高瀬くんの自転車を借りることにした。


サドルにまたがって、最後にもう一度「ありがとう」と高瀬くんに告げてから自転車をこぎ始めた。



サドルを下げてくれたのか、わたしの背丈にはちょうどいい高さで、こぎやすい。


だから、思い切りこげてものすごく速いスピードが出る。

でも、わたしが事故を起こしたら意味がない。


そう思って周りに気をつけてはいるけど、早くお母さんのもとに行きたくて、一生懸命 自転車をこいだ。



するとすぐに左に大きな病院を見つけて、駐輪場に自転車を置いた。

そしてそこから走って、病院内へと入った。


息が上がりながら病院に入ってきたわたしを、ロビーのソファに座る人たちは驚いたように見てきたけれど、そんなの気にしてるひまもなかった。