「えっ? そんなことしてないよ〜」

「……俺、見てたんだけど」



女の子はとぼけた様子だったけれど、高瀬くんの怖い顔を見て泣きそうな顔になった。



「だ、だって、大谷さんが……」

「勝手なうわさ立てないでよ。俺らはべつに付き合ってない」



わたしもそんな高瀬くんの姿を見るのは初めてで、周りはピリッとした空気に包まれている。



「……ごめんね、大谷さん」



女の子が諦めてそう言うと、沙莉は大きく首を横に振った。



「行こう」と言った高瀬くんの言葉に沙莉はうなずいて、歩き出した高瀬くんの後について行く。

それを見て、わたしはふたりのことを追った。



2組の教室の前の廊下に着くと、高瀬くんは優しい顔をして「大丈夫?」と沙莉に聞いた。