4限が終わってお昼休みになったからか、廊下にはふつうの休み時間よりもたくさんの人がいる。
「わっ……!」
だから、沙莉はだれかとぶつかったのか、急にバランスをくずして転びそうになった。
だけど後ろからきただれかに腕を掴まれて、沙莉が転ぶことはなかった。
「沙莉、大丈夫?」
「あ、蒼くん……。ありがとう」
高瀬くんは左手にビニール袋を持っているから、おそらく購買からの帰り。
なんか、高瀬くんってヒーローみたい……。
なんてのんきなことを思っていると、高瀬くんは壁に寄りかかっていた女の子に「ねえ」と声をかけた。
「た、高瀬くん……、どうしたの?」
女の子たちは恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「いま、沙莉にわざと足かけたでしょ?」
高瀬くんの声は冷たくて低くて、どこか威圧的な感じがする。