「それで、なんの話?」
内容は大体わかってるから、自分からそう切り出した。
「俺さ……また、走りたいんだ」
高瀬くんは、遠くの空を見ながら、ぽつりとそうつぶやいた。
「それって、陸上をやるってこと?」
「うん、そう。 久しぶりに近くでだれかが走っているのを見たら、なんか俺もすげえ走りたくなって」
そう言いながらわたしのことを見た高瀬くんと、ちらちらっと高瀬くんを見ていたわたしたちは目があった。
ちょっと恥ずかしかったけど、彼の瞳はキラキラ輝いているように見えて、なんだか逸らせなかった。
「……わたし、高瀬くんが走ってる姿、見たいな」
「はは、絵のときもそんなこと言ってたね」
高瀬くんが笑って言ったその言葉に、美術室でのことを思い出した。



