「あー悲しい」
駅に向かう途中、若菜はぽつりとそうつぶやいた。
「なにが?」と聞いてみると、若菜は大きなため息を吐いた。
「だってさあ、せっかくのイブなんだからオシャレとかして、彼氏とかとイルミ見に行きたいじゃん」
「もう、若菜ってば」
そんなこと言ったら、男子ふたりの立場ないじゃん。
でもたしかに……わたしだって、若菜と同じ気持ちだけどね。
こんなジャージを着て、髪もボサボサ、しかも彼氏じゃなくて男友だちと見に行くのは、むなしいね。
だってきっと、駅前のイルミだってカップルがたくさんいるだろうし。
でも大体の人は、この近くにある遊園地のイルミを見に行くらしいけど。
「先輩、そんなこと言わないでくださいよ~」
小西くんが笑いながらそう言った。



