「……そっか」
「うん、ごめん。 それなのにマネージャーをやってもらうのって悪いから、無理にやらなくてもいいよ」
その言葉に、高瀬くんからの返事はなかった。
ーーやっぱり、わたしのカンちがいだったんだ。
自分の壁に立ち向かおうとして、また陸上に近づいたわけではなくて。
ただ、わたしの何気なく言ったひとことに優しくうなずいてくれただけだった。
それなのに続けてもらうのって、悪いよ。
高瀬くんのこと、苦しませたくない。
「新しい人探してみるから、辞めてもいいよ。 ……ごめんね。またね」
立ち上がり、高瀬くんの顔は見ずにそう言った。
高瀬くんから「ごめん」と小さな言葉が返ってきたのを聞いて、わたしは一歩、また一歩、歩き出した。



