「わたし、忘れ物したからもどるね!またね!」
大きく息を吸って、みんなに届くようにそう叫んだ。
そしてすぐに踵を返して、走り始めた。
ローファーって、どうしてこんなにも走りづらいんだろう。
走っても走っても、なかなか前に進まなくていやになる。
なんて思ってたとき、段差に足が引っかかって、気がつけばすぐ目の前にコンクリートが見えた。
「……痛っ」
両手を地面に着いたから、顔から転ぶことはなかったけど。
右膝を擦りむいてしまったみたいで、血がにじんでいる。
ああもう、なにやってるんだろう。
なんて思ったとき、「吉井さん、大丈夫?」という声が聞こえて、パッと顔を上げた。
そこには、息を切らした高瀬くんの姿があった。
それを見て、目に溜まっていた涙はぽろぽろとこぼれ落ちた。



