そのブレーキ音と、後ろ姿で、すぐにだれかわかった。
この時間にいるの、めずらしいなあ……。
「おはよ、吉井さん」
わたしが高瀬くんに近づいたのと同時に、高瀬くんは振り返ってそう言った。
「お……おはよう」
あんまり目を合わせられなくて、でもそう返した。
「そんなにのんびり歩いてて平気?」
「え?」
「急がないと、遅刻するよ」
「う、うん、そうだよね。 急がないと!」
そう言って走って行こうとしたとき、パシッと右腕を掴まれて、振り返った。
「乗っていいよ」
高瀬くんはいつもどおり柔らかい表情で、そう言った。
「大丈夫だよ! 走れば間に合うし」
「いいから」
こんなやり取りをしている間も、時間はどんどん過ぎていく。
高瀬くんはいまもなお、わたしの手首をぎゅうっと掴んで離そうとしない。



