わたしは高瀬くんの彼女じゃないんだし、またこの空間を作れないのは当たり前のこと。

だけど傘から出て行くのはもったいなくて、どうしても名残惜しい。

それでも傘から走って出て行って、屋根のあるアパート階段の下で足を止めた。



「また明日ね!」

「うん、また明日」



高瀬くんはそう言って、わたしに背中を向けて来た道をもどって行った。

その背中が見えなくなるまで、わたしはずっとその場に立ち続けた。


わたしの一方通行のこの想い。
だけど高瀬くんのあの優しさに、どうしても期待してしまう。


だけどこの想いはきっと、伝えられないんだろうな。

高瀬くんは私のこと友だちにしか思ってないんだし、もし伝えたらこの関係が壊れてしまいそうで、いやなんだ。



――ううん、それ以上にわたしには一歩踏み出す勇気がない。


だから、期待させないでほしいのに。







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