バゲット慕情



 園田は、長身の背中を丸めるように、うなずいた。


「一年生の、十一月末から、十二月の真ん中くらいまで、華さんは、実家に、帰っていて……戻ってきたとき、すごくやせていて……それから、変わったように、思いました」


「そうそう。

すごくやせて帰ってきて、でも、すごくしっかりした」


「たくさんのものを、見てくれるようになった……と」


 それだ、と美智子は思い出した。

園田の目が華を追っているようだ、と気付いたきっかけだ。

かつて園田は、華の変化に対して、言葉を選びながら、ぽつぽつと説明した。


 たとえば、工房で使いっ放しにしたボウルや器具を、こまめに気付いて洗ってくれる。

洗って拭き上げたものを、きちんとあるべき場所へ戻しておいてくれる。

そうした気遣いが、自分にはとてもありがたい。

それをしてくれるのは、華さんだけだ。