ぽかぽかした陽だまりの中、小説を読み進める。

暖かくて、ちょっと眠い。

次第に瞼が重くなって、微睡んで来た時。


「桜庭 塔子(さくらば とうこ)ちゃん!」


ドアの向こうから声が聞こえた。

この猫撫で声は……担任の葛城 小町(かつらぎ こまち)先生だ。

あまり教室に行かない私を、おそらく障がい児か何かだと思ってる。話しかけるときはいつもこの気色悪い甘ったるい声を出すから。

この女、嫌い。


今いいところだったのに……

軽く舌打ちをしてからその場でドアに背を向けたまま返事をする。


「はい、先生。私に何か御用でしょうか?」

「あのね、今日うちのクラスに転校生が来たから、顔だけでも見に来てくれないかなって思って……」

「転校生?この中途半端な時期にですか?」


今は五月下旬。世間はゴールデンウィークが終わって、なんとなくだらけてしまう時期。

随分微妙な時期に来たものね。

おうちの事情とかもあるんだろうけど。