「康介…ありがとうね…辛かったでしょ…」
誰もが辛かったに違いない。
「信じらんネェよ…。オマエの今夜のパーティでそれ見た時も、今も生きてるんじゃねーかって普通に思う」
パーティで、愛恵が康介に差し出した左手。
今も ここで 朝から変わらずに 輝いている。

康介も 僚介の死を 実感できてないようだった。
翌日昼過ぎには 僚介の体は長谷川の家に帰って来た。

翌晩に通夜。

翌々日には荼毘にふされた。

人の生き死になんて、ものすごく簡単な事なのだと…

愛恵は、彼の死以来

彼の夢を見た。

夢の中の彼は、決して 愛恵を責めたりはしないけれど。

彼と交わした 最後の言葉。

『こういう順番だったんだな』

それには、自分がこの世から居なくなる事なんか、含まれていなかったに違いないのに…

現実は、こんなにも 過酷で、残酷なものとして、残された者の中に 深い悲しみを残したのだ。