演劇部が練習をする時間に合わせて早速2人は体育館に向かった。
ギギギギ…と重いドアを開けると練習着を着た部員たちが発声を終えたところで、入った瞬間に元気のいい挨拶で迎えられる。


「「よろしくお願いします!!」」


その清々しい挨拶に2人も返事をすると、田中の指示で素早く次の動きに入った。
部員たちが準備をしている間に2人は端の方でストレッチを始めた。


腕を上げたまま体を横に倒そうとすると、
「いたたたたたたっ!!!」

「ほら!息吐きながらゆっくり」

「いたたた…痛いんだって」


映画のアクションのおかげでほぼ全身筋肉痛となった2人は「痛い」を連発しながら、どうにかストレッチを終えた。


そして部員たちも何やら終わったころ田中に呼ばれステージのすぐ下に集められた。


「今日お2人は初参加の練習になります。まず本読みするか、いきなり入ってみるか…。2人はどっちがいい?」


その田中の質問と同時に全演劇部員の視線が昴と優に向けられる。


「うーん、どうしよう優」

「…よし、やってみるか」


挑発的なその口ぶりに田中は「いいね!」と笑うと、全部員に劇の位置に着くよう指示を出す。
部員の半数以上がそのままステージ下に待機し、キャストの部員たちはステージに上がった。


「今日は音響、照明、マイク、全部無いから、そのままキャストさんたちはお願いします」


監督を務める部長の田中の隣に立つ助監督の生徒が言う。
部員たちが「はい!!」と返事をすると、田中はストップウォッチを持つ手を上げた。


「一応この初通しも時間計らせてもらいます。何かあってもそのまま続けてください。終わったら個々に修正入れていきますんで」


こくり、と頷く昴。


「じゃあ宮藤くんと櫻井さんよろしくお願いします。
それでは…よーい、アクション!!」


その力強い声と田中の指がストップウォッチのボタンを押すのとは同時だった。