同じ頃隣のクラス…1組でも文化祭のクラス企画について担当ごとに話し合いが進められていた。


2組の芽衣同様、同じことを考えて受付係に優を推した人物がいた。


「受付、ねぇ」
と呟いてその目論見に半ば呆れる優。


「そんなので人来るかな…」

「あったりまえだ!何せ日本を代表する俳優、宮藤優がいるんだから!」

「…海斗、優が呆れてるぞ」


無言のままその様子を見つめていた優の考えを察し、蔵之介は海斗を黙らせる。
そのまま優に対して補足説明をした。


「受付って言ってもあと他に2人いるし、交代した空き時間で回れるから」

「そっか。わかった」


残りの受付担当2人はテニス部の女の子2人。
受付を決める際に女の子たちがジャンケンで熾烈な争いをしていたことを、欠席していた優は知る由もなかった。


「まー凄い戦いだったよね」と海斗。
それに黙って頷いた蔵之介。


何の話?と聞いても2人は苦笑いで誤魔化すばかりで優にはわからずじまい。


「で、海斗も優も聞いて欲しいんだけど…。さっき言ったように基本午前、午後で交代制。公開日だけは俺らが午前中の担当で、午後から空く感じになるから」

「はーい」

「わかった。ありが…と…ん?」


言葉を詰まらせた優はそこで何かにひっかかり、動きが止まった。
海斗が声をかけても返事をする様子はなく慌ただしくカバンから分厚いものを取り出した。


何それ、と見る2人。


「ごめん、忘れてた!公開日これに出ることになっちゃってさ…。午前中リハがあるんだ」


「これ…演劇部の?何で優が?」


実は昨日……と話し始める。
一頻り聞いたところで海斗は1人爆笑していた。


「まじかよ!面白そうじゃん!!」
ツボから抜け出す様子は全くない。


優は少し不貞腐れながら、
「いや、全然面白くねーし」


「でも本番午後だろ?俺たち見に行けるじゃん」


「そうだよ!いいねそれ!!」
その言葉に再び海斗の爆笑スイッチが入る。


「で、何やるんだ?」

「…サウンドオブミュージック」

「ほぉ…それはまた名作で」
心なしかその切れ長な目で蔵之介まで面白そうに優を見る。

「…の、何やるんだよ。まさか?」

「そのまさか。トラップ大佐」


おぉー!と海斗が入ってきて、2人で盛り上がっていた。


話し合いそっちのけで会話をしていたのは言うまでもなく。