翌日、遅刻するぞ!!と水島に脅されながら支度をして昴は学校へ向かう。


いつも通り水島の運転する車で、
いつも通り学校に到着し、
いつも通り教室へ向かおうとした。


しかし、校門の前に着いた途端…



「櫻井さん!!!ドラマ見ました!」

「うわ、本物の櫻井昴だ」

「昴ちゃん応援してます!!」



こんなにも見てくれた人がいるんだ…
と感動するのは束の間、大勢の生徒に囲まれて身動き一つ出来ない状態であることを把握した。



サインください!握手してください!と言われることは嬉しい昴だが、学校へ来て教室へ辿り着けないというのは困る。


するといきなり下から手を思いっきり引っ張られ、釣られてしゃがみこむと手を引かれたまま走り出す。
あまりにも突然のことで、昴はそれがボブヘアの女の子だと気付くまでに時間差があった。



連れて行かれたのは保健室。
どうやら裏口があるらしい、と昴は今初めて知った。



「ありがとう…芽衣」



手を引いてあの場から逃げさせてくれた友人 瀬山芽衣。
助かったよ、と口を開く前に芽衣は思いっきり怒った。



「昴!何考えてるの!?
なんで堂々と校門から登校したの!?
こうなることぐらいわかってたでしょ!」



友人の言い分が正しいあまり反論の言葉さえ出てこない。
ひたすら昴はごめんねと謝り続けていた。


「でも芽衣、何で保健室?
勝手に入ってきていいの?」



それはね…と嬉しそうに話し始める。事前にこうなることを予測した芽衣は予め学校側に対策をお願いしていたらしい。



「保健室の裏口を知ってたのも、勝手に入ってきた理由もそういうこと!」



「有名女優さんを歓声の嵐の中ほっとくわけにもいかないからねぇ」



いつの間にか入ってきた養護教諭の中里に驚く昴。
30代後半ぐらいの中里には娘がいるという噂があり、きっと生徒たちも子供のように思っているのだろう。



「中里先生!…すみません、
なんかこんなになってしまって」



はははと笑いながら中里は私は迷惑だなんて思ってないよーと言う。
男勝りと言えばそうなのだが、さばさばした中里の人柄が昴は好きだった。



「こういうの面白いよね!
私結構好きよ、ワクワクして!!」



まさかの中里の言葉に動きが止まる昴と隣で同意する芽衣。
え?面白いの!?



「あたしも昴と一緒にいると面白いから好き!非日常みたいで」



友人のまさかの告白。
確かに芸能人が学校にいるなんて滅多に無いですよね…。




「さ、そろそろ落ち着いたころだから2人とも教室行きなさい」
中里に保健室から追い出された直後、1限目の合図であるチャイムが鳴った。