フィルムの中の君




「昴おはよー!」


朝から元気よく挨拶をする芽衣の明るい声に「おはよう…」と覇気の無い返事をする昴。


昨日演劇部からのオファーを引き受けもらった台本を早速一通り読んだ。
夜暗い内から読み始めたはずなのに気付けば窓から陽が差しており、朝になっていたのだ。


「どうしたの?大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」


とてつもない睡魔が昴を襲っていた。
下手したら立ったままでも寝れるのではないかというぐらいに。
目の下のクマを指摘され多少なりとも隠してくればよかった…と後悔。


早速今日練習があるということで台本を持ってきている。


午前中の授業をいつも通りこなし、お昼休みを終え気付けば午後の授業に入っていた。


ロングホームルームのこの時間、話題は文化祭について。
前回昴がいたときから数週間経っており話はかなり進み具体的になっていた。


「昴、これ…」


腕を突っつかれ隣を見ると芽衣が1枚のルーズリーフを差し出してきた。
「有紗から渡してって」と付け加える。


教卓の前で話す学級委員の彼女をちらりと見ると視線を手元に戻した。
書いてあったのは今までの話合いの流れや決まった詳細について…など。


「私のためにこんなに詳しく?」

「有紗ってそういう子だから」
ふふふっと笑う芽衣。


紙には係分担や使用する教室の部屋割り、それぞれの担当ごとの細かい設定までが記されていた。


「えーっと…話は纏まってきてるとそれぞれの係から聞いてるんで、残りの時間で細かいことをそれぞれ話し合って!」


その指示にそれぞれグループに分かれて話し始めた。
昴がキョロキョロしてると有紗に呼ばれる。


「昴はうちのグループだから!」

「そうなんだ!よろしくね」


集まったメンバーを見て思わず「え?」と声が出そうになるのを堪える。