その夜夕食前に昴は文化祭の劇のことを水島に打ち明けた。
結論から言うと許可は得られた。
しかし、水島から出された条件を飲み込まないことには許可出来ないと言われる。
「絶対に無理しないこと。
もし倒れたりしたらどうするの?」
それに関しては約束した。
…とは言え昴のことだから多少の無茶をすることは水島もわかっている。
そして条件の2つ目、
「やるからには最後まで責任を持ってやりなさい。自分でやるって決めたんだからね」
もちろん最後まできちんとやる気で昴も引き受けていた。
昴が力強く頷くと、ふわりと笑い水島は頭を撫でた。
「昴、最高のマリアにしてね」
「うん!約束する」
頭に置かれた手の温もりに、仕事を始めたばかりの頃を思い出した。
演じることが楽しくて上手く出来るといつも水島が褒めてくれる。
(お芝居が楽しいって思うのは、
あの時からずっと一緒だ…)
しばらくその思い出に浸っていたが水島の声で現実へと引き戻された。
「そういえばさっき…あ、帰りね。宮藤くんと一緒にいたじゃん?」
「帰り?あぁうん、その話をされた帰りだったんだよね」
「と言うことは彼も出るの?」
頷いて答えると水島はやっぱりね、と言いだけに半笑いした。
「…相手役、宮藤くん?」
「相手って言うべきかどうかわからないけどね。優はトラップ大佐」
昴がやります!と返事するのはわかるが、あの優までがやるとは思わずに水島は頭を抱える。
「宮藤くん何でよ…」
「え?なんか言った?」
ぼそりと囁いた言葉に聞き返すが、何でもないと水島は言った。
(宮藤くん何考えてるのよ…本当に)
