体育館から下駄箱へ向かう途中、昴と優は並んで歩いていた。
外からは運動部の声が聞こえてくる。
「結構これ量あるな…」
もらったばっかりの台本の厚さを見て改めて内容の濃さを実感させられた。
「でも本当頑張らないとね!」
「コードネームの撮影だってそろそろ佳境に入るんだから、手抜けないからな」
そんなことしないよ!と怒る昴。
しばらくして声が聞こえないな、と優が後ろを振り向いてみると突然何を思ったのか立ち止まり、なんとなく顔色まで青くなっていた。
「昴?どうした?」
いきなり青ざめた顔に優は心配になってかけよった。
(ここで倒れられたらどうにもならないぞ…!)
「ま、待って、まずい…」
「体調悪い?大丈夫か?」
そして昴は青くなった唇を動かして、
こう言った。
「水島さんに怒られる…」
「え、水島さんって……あぁ」
すぐ優の頭にもショートヘアでかなり頭の切れる敏腕マネージャーの姿が浮かんだ。
「何、怒られることしたわけ?」
半ば呆れたかのように聞く。
「違うよ!この舞台の話!勝手にそんなことしてーって怒られるかも…」
「まぁそれは怒られるかもっていうより、怒られるだろうなぁ」
だよね…と肩を落とす。
帰るのが怖いとブツブツ言いながら優に引っ張られ校門まで歩いてきた。
少し離れたところからその姿を見かけ、運転席の窓から手を振る水島。
「ほら、水島さんいるよ」
と、からかうように笑う優。
「あー!本当にどうしよう!!」
「さぁ?ちゃんと自分で話すしかないだろ」
じゃあまた、とひらひら手を振り半泣き状態の昴を置いて帰っていった。
