「わかってる、わかってるよ…」
震えて消えそうな声で話し始めた。


「昴…」


「でも!!可能性が低いからってあなたは諦めるの!?ねぇ、そういうこと!?
時間が足りなくて間に合わなそうだからって理由で!!!
今回は女優としての私に来た依頼なの!私は女優!プロなの!人生かけてやってんの!!!!
例えどんな舞台だって最高のものにするのが役者でしょ!!
プロならつべこべ言ってんじゃねーよ!!!!!そこで腕見せてみろ!!」



言うだけ言った昴は息が上がっていた。
顔を真っ赤にして目には薄っすらと涙が浮かんでいる。


「本気なんだよな?」


「当たり前でしょ。何度言わせる気?」


しばらくの無言の後、わかった、と優は呟いて昴の顔を見た。


「俺のトラップ大佐に惚れてもらうから、覚悟しとけよ昴」


え…?と顔を見ると優は笑顔で昴を見ていた。
鬼のような形相だった昴もその顔を見て表情が和らぐ。


「優も…やってくれるの…?」


「当たり前だろ。昴がマリアやるのに何で俺が大佐やらないんだよ」と笑う。


「ほ、本当に…?よかったぁ…」
へなへなと座り込む昴。


「ほら昴、出るって決めたなら早く動かないと時間無いから!」


そうだねと立ち上がろうとしてよろけた昴を支える。


「ご、ごめん…」


本当だよまったく、とすぐ隣でため息が聞こえた。


「その顔、他の奴に見せるの禁止」


ぽかーんとする昴の頭に手を乗せ、先に体育館に入る優。


(へ…?なに?どういうこと…?)


涙を拭いて急いで昴も中へ戻る。


台本と楽譜、それから音源を渡されると、とてつもない速さで田中から説明を受けた。