土日開けで優は学校に登校すると、すぐに女の子たちに囲まれた。
あまりの数に身動きさえ取れない。
「優く〜ん!サインして〜!!」
「ごめんね、ちょっと用事あるから早めに行かなきゃいけないんだ。だから通して欲しい」
半ば無理矢理人集りを掻き分けて教室に辿り着く。
着くや否や、心労からのため息が漏れた。
「お疲れ。モテると大変だな」
笑いながら蔵之介が近づいて来た。
「あ…おはよう」
おはようと挨拶をし、どうなった?と耳打ちする。
怪訝そうな優に言葉を繋げた。
「彼女の件」
2人の間柄で話題に出るのは1人しかいない。すぐに優も勘付いた。
「え?うん、まぁ…
そういえば海斗は?」
朝から姿の見えない海斗の行方を問う。
普段ならこの時間には既に教室にいるはずだった。
「あぁ、あいつは部活の関係で午前中は公欠だってよ。…って話逸らすな」
「あ、いや、逸らしたつもりじゃなかったんだけど…」
実際その気は優になかったが、蔵之介は若干睨みを利かせている。
芸能人にとって…若手俳優にとっては特に命取りな恋愛関係。
下手したらスキャンダルだと騒ぎ立てられ、最悪の場合俳優生命さえ危うい状況に陥ることも有り得る。
しかし優は蔵之介を信頼し、友達にかけてみよう、と話すことを決めた。
「それで話したいことがあって。
ここじゃちょっと…」
全てを言わずとも理解した蔵之介は、「行くぞ」と優を連れ出した。
何も言わずただ後ろを付いていく優。
朝のホームルームの合図であるチャイムが聞こえる。
「あの…さ、思いっきりチャイム鳴ってるけど」
そんなのいいよ、と言いたげに笑うと屋上へ上がる階段を上っていった。
その1番上に座ると、ふぅ…と蔵之介は言う。
「ここなら話せると思ってさ」
普段誰も通ることのない校舎の1番上の階で、尚且つ使うことのない屋上への階段。
ここなら人目を気にすることもない。
「昴ちゃんのこと、だろ?」
見透かしたかのような目に嘘はつけないと頷いた。
「やけに今日は素直だなぁ」
と笑う蔵之介。
掻い摘んでざっくりと事の流れを話した。
最近避けられている、と。
「で、理由に心当たりがないと?」
「あったら悩む必要ないだろ」
それはそうだ、と蔵之介は考える。
「でも変な奴だな。女慣れしてそうなのに昴ちゃんのことになると不器用なんだから」
勝手にどんなイメージを植え付けられているんだ、とは突っ込まずに返す優。
「適当にあしらうのはいいんだけど…」
「それ女の子に言ってみろ。
全国の宮藤優ファンが泣くから」
相談しているとは思えぬ顔で楽しんでいる蔵之介。
「あのな…そういうことじゃないから。
だからモテる蔵之介にどうしたらいいか聞いてるんだよ」
「モテる?俺が?」
本気できょとんとする蔵之介。
どうやら本人は体育の授業中や部活中に見つめられていたり、噂が流れていることを知らないらしい。
袴姿がかっこいいと人気なのだ。
面倒臭くなりそれについては追求せずに優は無視した。
「俺もその手の話はわかんないからなぁ…海斗ならそういうの得意なんだけど。
でも本人に聞いて答えてもらえないようなら周りから行くしかないだろうな」
「…周り?」
「昴ちゃんと仲いい子に聞いてみるとかさ、何か聞いてるかもしれないし。
えーっとなんだっけ…すごい仲いい子がいたんだけど…」
まさかそこまで知ってるとは思わず、優は更に尋ねた。
「2組の子?名前は?」
「だから…何だっけな…。
あ、そうだ。2組の瀬谷さん」
意外な収穫に情報を頭に入れる。
「わかった、ありがとう蔵之介」
「別に俺は何も」
そう言って立ち上がるとズボンの埃を払い階段を降り始めた。
なかなか動こうとしない優に声をかける。
「…戻らないのか?」
「だってもう授業始まってるよ」
蔵之介が左手に付けた腕時計を見ると1限目が始まって既に30分ほど経過していた。
「うわ…本当だ」
「仕方ない、怒られに行くか」
その後2人で教科担当の教師からお説教を受けることになる。
