その後撮影は進んでいき、学生にとっては夏休みの最後…8月31日。
この日も早朝から撮影は行われた。


終わらない!と騒いでいた昴の課題も数日前どうにか終わっていた。


幾つものシーンを撮り、鈴屋の声がかかるとカメラが止まる。
普段通りに撮影をしていた。


ただ…普段と違ったのは16時半を過ぎたころ、昴と優は今日はこれで終わりだと鈴屋に告げられたこと。


え?終わり!?と目を丸くする昴に鈴屋はこう続けた。


「高校生の君たちは今日が休み最後だろ?今日ぐらいゆっくりしろ!…とは言ってもこんな時間になっちゃったけど」


すまないね、と謝る鈴屋に2人はお礼を伝え早めに撮影を切り上げた。


「…学生だからってそれアリ?」
ぼそっとつぶやいたのは藤森。


「お前、本当にあの2人に対して敵意剥き出しだなぁ」と浪川が苦笑いをする。


「監督も高校生だからって甘すぎるんじゃないですか。プロなら休みなんて言ってる場合じゃないと思いますけど」


目の前にいた浪川がバツの悪そうな顔をして藤森を見る。
え?と思い、恐る恐る藤森は後ろを向いた。


満面の笑みで立っていたのは、
ご本人…鈴屋栄司。


(え、嘘だろ…)
その一瞬で体中の血の気が引くのを藤森は自覚した。


「藤森くんの言う通りプロとしての自覚は大事だと思うよ」
と、ニコニコする鈴屋。


次の瞬間、一変する表情。


「でもプロって言うなら、プロらしい仕事しろ。ハッキリ言ってお前の演技は素人以下だ。あの2人の足元には到底及ばねーよ、藤森くん」


それだけ言うとスタスタと帰っていく鈴屋。


「浪川さん…俺どうしたら…」
真っ青な顔になり、目の前の先輩に助け船を出した。


「さぁ、それは自分で考えろ藤森、
お前がプロだって言い張るなら尚更。
自分がどうするべきか考えることだ」