「あと数週間で学校かぁ…」
隣でしょんぼりとする昴の表情を見逃さなかった。


「どうしたの?」と聞く水島。
返ってきた答えに呆れるしかなかった。


「宿題終わってないのー!
水島さん助けてよぉ」


通っている学校は進学校では無いためレベルがやたら高いわけではないのだが、このぎっしりと詰まったスケジュールでは難しいものがある。


「芽衣ちゃんは終わってるの?」


昴も終わらせちゃえ!と言いたかったところだが、これまた予想外の返事。


「ううん…まだだって。
英語が少し残ってるって言ってた」


昴の残ってる量と芽衣の残ってる量は
どう考えても差がある。
水島には応援するしかなかった。


「映画の撮影っていつまでやるのかな」


不貞腐れていた昴は視線をずらし、水島に問う。
運転する水島には外の景色を見ているぐらいにしかわからなかった。


「明日も21時半ぐらいまでだけど…」


そうじゃなくて…!と口を挟む。
「聞きたいのは何月ぐらいまでやるのかなってこと!」


「うーん、予定では10月あたりまでなんだけど…。どうして?」


10月かぁ…と僅かに口が動く昴。


「何となく!凄く順調に進んでるからどうなのかなーって思っただけ!」


無理してるのが手に取るように伝わり
水島はそれ以上追求しなかった。


いつもと同じ道を走らせている。
次の交差点を左折し、さらにひたすら真っ直ぐ行く。
しかし、今日ばかりはそうもいかなく、


「え?何でこんなに混んでるの?」


交差点を曲がったところまではよかったものの、少し進むと混んでいた。


いつもならこの時間空いてるのに!と内心悪態つく水島。
看板を見て、ようやく工事が理由だと知る。


この場所で工事なら少し回り道した方が早いよね…と思い、どうするか聞こうと隣を見た。


「ねぇ、すば…」


見ると小さな寝息を立てている。
このスケジュールで疲れが溜まっているのだろう。


起こすのも可哀想かな、とそのまま回り道をして自宅のマンションへと帰る。
その道中起きる気配は一切ナシ。


マンションへ着いて駐車場へ車を入れた段階でも起きる様子は無かった。


「昴、着いたよ、起きて」


ん…と言い肩を掴んだ手を払われる。


これはダメだと思った水島は覚悟を決め背中に昴を背負った。
カバンを右手に、鍵は事前に左手に持ち
そのままエレベーターに乗り込む。


人を背負っていると結構ひとつひとつの動作が大変で、水島は鍵穴に鍵を刺すだけでも苦労した。


そのままベットへ寝かせると履いていた靴を脱がし玄関へと持っていく。
それから布団を掛けに昴の部屋へと戻ってきた。