数日前の昴と優のアクションごっこはすぐに学校中に広まり、ついには教師の耳にまで入ってしまった。
さすがに何のお咎めも無く…
とはいかず、2人揃って生徒指導室に呼び出される。
「お前たち…学校で何してんだ」
恰幅の良いクマのような男性教師が机の向こう側でジロリと見ている。
何の反論もせず黙ったまま座っていた。
「いや、ちょっと…」
「ちょっともクソもあるか宮藤!
一体何考えてんだ!あ!?」
どうやら想像以上にお怒りのようで、
下手なことは言わない方が良さそう。
「壁伝いに走るだぁ?そんな漫画みたいなこと出来るわけないだろ!そもそも学校内で木刀振り回すのが危ないことぐらいわかってるよな?」
この男性教師…数学科の飯田の言い分は正論であった。
「でも先生、昴…櫻井さんは壁伝いに走ること出来ますよ。生徒の誰かからその話聞いてますよね?」
ますます不機嫌そうになる飯田。
(ちょっと〜…何言ってくれてるの!)
昴は優の肘を突っついた。
「そんな冗談誰が間に受けると思ってんだ。大体問題はそこじゃない。テレビに出てるからって調子に乗るなよお前ら」
どこの世界でもこういう芸能の仕事をしてる人間を心良く思わない人がいる。
飯田はきっとそっち側の人間なのだろう。
「櫻井だけでも大変だったのに…。
宮藤、お前みたいなのが来たおかげでこっちはますます大変なんだよ。
これ以上面倒臭い問題は起こすな!」
バンっ!!
乱暴にドアを開けて大きい足音を立てながら出て行く飯田。
ようやく終わった説教にため息を吐く昴は、ずっと隣に座っていた優を見た。
くっそあいつめ…
そう小さく言うと優は勢いよく生徒指導室を飛び出して行った。
「え?優待って!何する気!?」
派手に問題行動を起こして処分を受けたんじゃたまったものじゃない。
(教師相手に暴力なんて…冗談じゃないわ)