『さて、
裏切り者はここで消えてもらおうか』



優はそう言うと前屈みになり抜刀するボーズをとった。



この台詞とこの動きは…
あの人斬り映画のワンシーン。



偶然にも昴が好きな作品だった。



『裏切り者?それは貴様だろう。
まだこの名前を人様に譲る気は無いんでね』
ニヤリ、と口角を上げる昴。



2人が同時に息を飲んだ瞬間、
刃のぶつかり合う音が響いた。


右から、左から、
そして相手は下から切りつける。


何度も見たこのシーン、昴は完全に動きを覚えていた。


下からの刀には高く飛んで避ける。


次振り返ったときには右頬すれすれに刀がある。
それを避けて斜めに刀を入れる。



驚くほど優の動きは機敏で、相当慣れてるとしか昴には思えなかった。


攻撃しあい、最後の最後。
いわばクライマックスのシーン。


壁伝いに人斬りが走って
壁を蹴り高く飛び、上から1発。


手に汗握るこのシーンを幾度となく見てきた。


優と刀を離し、すっと息を吸う。
その瞬間床を蹴り、壁伝いに昴は走り出した。


思いっきり壁を蹴り高く飛んで斬りつける。


『…我が名は何人たりとも譲らん』