「刀ですか…!?」


「イメージとしては人斬りのような感じにしようと思ってる」


「そ、それは練習ありますか?」


もちろんこっちで用意するよ、と大きく頷く中田。


「千秋さんは快諾してくれたから、
あとは昴ちゃんの返事次第だ」



(この作品のオファーを受けたのは鈴屋監督っていうこともあったけど、
水島さんがいい経験になるよって言ってくれたからだった。
そのいい経験がまさかこんな大事になるとは思ってなかったけど…)



膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめ、真っ直ぐ目の前の3人を見た。



「やります。
銃も刀もアクションやりきります!」



昴の女優根性に鈴屋は口角を上げる。



「ん、話はそれだけ。
詳しいことは追って連絡するよ」



失礼します、と部屋を出るやすぐ様深いため息を吐いた。



「なーに、どうした昴ちゃん」



偶然通りかかった大物俳優にこんな状況を見られるとは思っていなかった昴は驚きのあまり声を出してしまった。



「ははは、驚かせちゃった?
なに?鈴屋くんに何か言われた?」


どうやら千秋は鈴屋に何か言われて凹んでいると思ったらしい。
隠すようなことでもないだろうと、さっき告げられたことを千秋に話した。


「はぁー、刀ねぇ…そっかそっか。
昴ちゃんがねぇ」



その言葉に同情や慰めは一切感じとれず、寧ろ楽しんでいるのではないかと思わされるほど。



「千秋さんも刀を使うって聞きました。
演じきれるか不安です…」



「そんなこと言ったら僕だって不安さ。生まれてこの方一度たりとも刀を持ったこと無いしねぇ。
まぁそれでも演者の特権で、役を楽しんでやってやりゃいいんだよ!な?」



豪快に笑い肩を叩き車へと向かう千秋。



(そうだよね…
とりあえずやってみなきゃ始まらない)



さっきとは打って変わり、晴れ晴れした表情で水島の待つ車へと向かった。