「ただいまー」と昴が帰宅すると部屋の奥からトマトの香りがしてきた。
手を洗い制服を着替えキッチンに向かう。


「おかえり昴」


水島は鍋でグツグツと煮ながら味見をし、ハーブを足して再び味見…を繰り返していた。


あのね水島さん!と、冷蔵庫からお茶を取り出しグラスに注ぎながら昴は話し始めた。



「優くん、学校同じになっちゃった」



なっちゃった、という言い方はあくまで故意では無いかのような表現である。
そこには触れず水島は返事をした。



「あ〜…やっぱりね」


「やっぱり…ってどういうこと?
水島さん知ってたの?」


違うわよと否定してから水島が朝見かけた車の話をした。
車種と運転手からしておそらく彼の事務所のものだろう、と。



「優くんはマネージャーさんが運転してるわけじゃないのか」


「基本はマネージャーがやる方が効率いいし人員削減になるんだけどね。まぁ例外も多々あるでしょ。特にあの事務所は」


そんなに噂がある事務所なの?と聞くと大手だから相当お金あるのよと水島に言われる。


「宮藤くんリオンプロモーションよ」


想像以上の大手な事務所の名前に、え?と耳を疑いつつも、納得をした。



(あぁ、だから高校生なのに高級マンションなんかに住めちゃうのね!)