真っ先に昴の目に飛び込んできたのは、女の子たちが黄色い悲鳴を上げる例の俳優だった。



「昴、食事中悪いんだけどちょっと打ち合わせしてくれない?」


あまりの一言に目が点になる昴。
何のこと?と聞き返す前に優は一方的に話し出す。



「次のドラマ、監督が練っておけって言ってて。昴も聞いてるでしょ?すぐ撮影入るし時間もあんま無いし」


(何の話だか全くわからないんだけど)


「と言うわけで、昴の友達には悪いんだけど、ちょっと昴借りるね!」


キョトン、としている昴の腕を強引に引っ張って教室から出て行った。



「ちょっ…なになになに、
どういうこと?何の話!?」


全く状況が掴めない昴は優にまくし立てて聞く。
ようやく腕を離されたと思ったら、連れてこられたのはまた保健室だった。



「巻き込んで悪い!!」
両手を合わせ申し訳無さそうにこっちを見る優。



「どういうこと?…って、優くんとのドラマの話なんて私聞いてないんだけど」



「俺も聞いてない」


じゃあどういうことだよ!と半ギレするのを堪え、昴は再び説明を求めた。



「すごい人数に囲まれてどうにもならなくてさ、全然昼食べられないし動けないしでどうしようかと…。それで逃げ出すのに」


私を使ったってわけね。
と、若干冷ややかな目線を目の前の俳優に送った。



「それにしてもだよ?優くんあれはちょっと強引すぎ。理由こじ付けるのもいいけど、もうちょっとまともなこと言ってよ」


一方優は悪びれる様子も無く、近くにあった椅子に座る。