昴が校舎に入る前から下駄箱には人が集っていて、キャーキャーと随分楽しそうだった。
「何この人集り…」
やたら女子生徒ばかりが集まっている。
どうこの大群をかきわけて下駄箱へ行こうかと考えたものの、難しそうなので昴は無理矢理強行突破を試みた。
弾き飛ばされ足を踏まれながらもどうにか自分のクラスの下駄箱へ辿り着き、安堵のため息を漏らす。
自分のところから上履きを取って履き教室へ向かおうとした、その時だった。
人集りの中心にいた人物と目が合い、最初昴は自分の目を疑った。
(んー、私どうしたのかな?疲れてる?今見えてるものは幻覚?いや…まさかね)
あれは幻や幻覚などではなく正真正銘の本人であると気付いた昴が叫ぼうとするのと、相手の叫びが同時だった。
「優くん!?」
「昴!?」
まさかとは思ったけどやっぱり本人だったのね…いや、何でこんなところに制服着ているのかな?
昴の頭は思考回路が繋がらない。
2人一斉の叫びを聞いた人集りは一瞬にして静まり返った。
じっと昴と優を見ている。
昴が動けずにいると向こうの方から人をかきわけてこっちに来た。
「ちょっ…え?ちょっと待って。待って。どういうこと?何で優くん私の学校にいるの?一旦落ち着こうか、ね」
「それはこっちのセリフだよ。俺はこの学校に転校してきたの!わかった?理解出来る?」
それから数秒間が開き、え?と昴は聞き返した。
「あーもう、いい!ちょっと来い!」
苛立ちながらも優は昴の腕を引っ張ると歩き出した。
混乱してる昴の耳には後ろから聞こえる黄色い悲鳴は届いていなかった。
