ドラマ黒鳥(ブラックバード)はクランクアップから2週間後、最終話が放送された。
かなり過激な内容だという意見もあったが、監督脚本家の拘りのかいがあり恐ろしいほどの視聴率を叩き出したそう。



それもこれもあの役者たちがいてくれたからこそですーー。
と後日監督として鈴屋は語っていた。



黒鳥がきっかけで櫻井昴の実力は日本中が認め、宮藤優の人気は更に高まった。
ドラマで共演して以来親しくなった昴と優はお互いに連絡先を交換し、何度か連絡を取っている。



昴は携帯の電源を切ってカバンの中にしまうと、水島の運転する車から降り教室へと歩き出した。



「おはよ、櫻井」


低めの声が隣からする。
下駄箱で偶然会ったのはクラスメートの男子だった。


「陸か!おはよう」


青山陸は少し癖っ毛で茶色い髪で、基本的にあまり口数は多くない。
でも昴には自分から挨拶をしてくれるようになった。



「仕事大変そうだな」



「え?うーん…まぁ沢山あるときもあるけど、別に大変じゃないよ」



「…あんま無理すんなよ」


がさっと何かを昴に押しつけると、足早に一人で教室へと行ってしまった。


(え?心配してくれてる?珍しい…)
無理矢理手渡されたのは小さいケースに入ったチョコレートだった。


「陸お菓子嫌いなのに…
でもありがとう」


今は姿が見えない相手に小さく昴はお礼を言って大事にカバンへしまった。