現場に優が参加してから2週間。
最初はぎこちなかった間柄も今では打ち解けてみんなで仲良く雑談するようになっていた。


宮藤優演じる藤崎圭介は最後3話分に登場するのだが、出演シーンが多い。
あまりのスケジュールの過密さに昴も驚いた。



カットの声がかかり昴が控え室に戻るとそこには先客がいた。
台本を読んでいた優は顔を上げ昴にお疲れ様と告げる。



「菱川蘭ってすごい難しい役だよね」


「そんなこと言ったら藤崎圭介もかなり演じるの難しそうだよ!」


昴の言葉に確かに!と笑う優。
でも黒鳥のキャラは何をやっても難しい役ばっかりじゃない?と付け加えて。



「でも…櫻井昴はさすがだね、
あそこまで役を生きれるなんて。
まるで蘭が目の前で生きてるみたい」



そう優は真剣な目で語った。



「圭介だって実在するかのようなリアリティーあるよ。あんなに登場人物が生きてるなんて思ったの初めて」



優は微笑んで昴を見つめた。
これが女の子が夢中になる微笑みなのか、と昴は思いながら。


「初めて君を見たときか…」


「宮藤さーん!!出番です!」
その時丁度迎えにきたスタッフの声により、優の言葉は遮られた。


じゃあ行ってきます、と台本を持ちスタジオに向かう後ろ姿を見送った。