フィルムの中の君


優がスタジオ前を通りかかると何やら騒がしい。
中を覗くと座り込んだ昴の周りにスタッフが何人かいた。

「どうしたんですか?」

「あぁ宮藤くんか。実は櫻井さんがさっきのリハで足首やっちゃったみたいで…」

振り返った田中は優に伝えた。
自分で足首をさする昴は辛そうに見える。

「昴、今水島さん呼んでくるから待ってて!」

「ごめん優…ありがとう」

廊下を駆け足で進んでいくと偶然水島を見つけた。
水島さん!!と声をかける。

「お、宮藤くんお疲れ様。撮影もう終わったの?」

「それより昴が…足首やっちゃったみたいで…」

えぇ?と眉をひそめる水島。ふーっと大きく息を吐く。
まだスタジオにいます、と優が告げると早足で水島は歩き始めた。

カンカンとヒールの音が近づくとスタッフ数名が入り口に顔を向ける。

「櫻井さん、マネージャーさん来ましたよ」

田中が足首に保冷剤をあて冷やしている途中だった。

「昴!どうしたのこれ」

「さっき私とのシーンでリハをやってたんですが多分壁を蹴るときか飛んでから着地する際に足首を捻ってしまったようで…」

私が早く気づければ…と謝罪する千秋。

「千秋さんの責任ではないです、謝らないでください。
ただ今日はこのまま病院に連れて行かせてください」

もちろんそうしてくれ、と鈴屋は返す。

「近くの病院調べてみたんだけどここが一番近そうだな」

鈴屋はスマホの画面を水島に見せた。
総合病院の地図が表示されている。

「昴、立てそう?今日は病院で診てもらおう」

ゆっくりと立ち上がった。
しかし痛みで真っ直ぐ立つのは難しそうだった。

「監督、皆さん…撮影止めちゃってすみません…」

「なーに気にするな櫻井。あんなにすごいもの見せてもらったんだ。体が資本なんだから早く病院行きなさい」