フィルムの中の君


鈴屋のカットの声で昴は千秋から距離をとった。
激しく動いた後で2人とも息が上がっている。

「櫻井さんよかったよ」

差し出された右手を握り返し昴は握手に応じる。
うっすら額には汗が馴染んでいた。

鈴屋と田中も2人の元に駆け寄ってくる。
他のスタッフからも拍手が沸き起こった。

「千秋さん!櫻井!よくやってくれましたね」

「カメラ回しててよかった〜!」

「まさかリハでこんなもの見られるとは…」

「このまま撮ったやつ使ってもいいかもしれませんね」

監督とアクション監修は興奮気味である。
昴もやり切った開放感からテンションが高かった。

「千秋さんすっごくかっこよかったです!!!!」

ははは、と笑う千秋。

「あなたの雪村に圧倒されましたよ。
私の黒鷺もどうにか雪村に負けてないといいんだけど」

そんなわけ無いじゃないですか!と突っ込む昴。
その瞬間動きが止まった。

「櫻井どうした」

急に固まった昴に鈴屋が問いかける。

「いえ…なんでもないです。ただどうにか最後まで出来たって安心から力が抜けちゃって」

と言いながら座り込んでしまった。

「大丈夫か?櫻井立てる?」

3人に覗き込まれ首を横に振った。
鈴屋はスタジオ内を見回す。

「マネージャーは今日一緒に来てる?」

「はい…多分控え室で仕事を…」

脈打つようなズキズキとした痛みに思わず足首をさすった。
ちょっと足見せて、とすかさず田中は裾を上げて確認する。

「これ…相当痛いでしょ」