「まぁね〜!…とか言って本当に苦労したのは僕じゃなくて部員たちだよ。
あれこれ注文ばっかりつけて、大変だっただろうけどよくここまで付いてきてくれたよ」
と言ってペラペラとページを捲った。


ちらっと覗いてスコアを見ると、至る所に無数の書き込みがある。
楽譜自体も破れそうなほどに使い込んであった。


「この楽譜はその努力の証か…」
優は海斗が持っているスコアの表紙を撫でた。


「それって2人にとってはお客さんからの拍手だね」


確かにそうだ、と昴と優は同時に微笑んだ。
しんみりとした雰囲気になったところで口を開いたのは優だった。


「それで部員のみんなに挨拶しようと思ったんだけど、今忙しい?」


「あー、片付けに入っちゃってるところなんだけど…少しここで待ってもらってていい?」


走って向こうの方に行く海斗の背中に「ごめんな」と声をかけたが、本人に聞こえたかはわからない。


何やら数名の部員に声をかけ、その話が伝わったようで全員が作業している手を止めて一ヶ所に集まった。
くるりと振り返った海斗は手招きして優と昴の2人を呼ぶ。


海斗が部員に向かってお疲れ様と声をかけると、その何倍もの声量でお疲れ様です!と返事が返ってきた。



「片付けの途中にごめんね、皆さんサウンドオブミュージックの舞台お疲れ様でした。
舞台を終えて櫻井さんと宮藤くんから皆さんに一言ご挨拶ということで来ていただきました」


さぁどうぞ、と自分の立ち位置を2人に譲り、彼は部員たちの端の方にずれた。


「管弦楽部の皆さん、お疲れ様でした。
今までのどの練習で聴いたよりも素晴らしい演奏でした!
短い時間の中でここまでのレベルにするのは俺たちじゃ想像出来ないほどの苦労があったと思います。
でも、今日この舞台を皆さんの演奏と一緒に出来て、本当に良かった!」


その言葉に部員たちがわーっと歓声と共に盛り上がる。