その日仕事から帰宅すると一本の電話がかかってきた。
瀬山芽衣の名前が表示される。



「もしもし、芽衣?」


『あ、ランチタイムでshow!見たよ!
学校中がテレビ見てたからね〜』



楽しそうに話す友人の声に苦笑いを浮かべる昴。
ーテレビは絶対点けちゃダメ!
なんて先生方言ってませんでしたっけ。




しかし芽衣は昴にすぐ単刀直入に質問を投げかける。
『スペシャルゲストが宮藤優って本当なの?』



顔が整って甘いマスクで、まさに絵に描いたような美少年。いや、美青年というべきなのだろう。
若手俳優の中ではルックス実力ともにナンバーワンであり、女性ファンが大勢いる。


そんな宮藤優が黒鳥のゲスト?
本当かどうかだなんて私も聞きたいところよ!


…なんて言うことは出来ず濁して芽衣を誤魔化す。



「まぁそれはドラマを見てのお楽しみ!
じゃあもう夜遅いし、また明日学校でね!」



無理矢理電話を切った昴は、
そのまま水島のいるキッチンへと向かった。



「ねぇ水島さん」


背後に立っていた昴に驚き、思わず持っていたお皿を落としかけるところだった。


「ビックリした〜。なに?昴」


「あの…宮藤優くんのこと」



あぁ…それかぁ。
と、再びお皿を片し始めた。



「監督からも脚本家からも何も聞いてないの。もちろんキャスティングからもね。多分スタッフ、出演者全員何も知らないと思うわ」



なのにこんな形でドラマの出演者を発表しちゃっていいの!?
どんなに昴が疑問を抱き抗議したところで放送してしまったものは取り返しがつかない。



「監督に直接聞いてみるしかないよ」



こうなった以上、水島の言葉以外に方法は無いと昴は諦めた。