ドラマの撮影の合間を縫って昴と水島が訪れたのはとあるテレビ局。
撮影現場とは異なる雰囲気に緊張した面持ちで昴は入る。



昴、また緊張してるの?
と水島が笑いながら肩をたたく。



局を歩くだけで有名監督や大御所俳優、敏腕プロデューサーなど様々な人たちがいる。一人一人丁寧に挨拶をし、昴は楽屋へと向かった。




ーーコンコン。
扉をノックする音が聞こえ返事をする。
入ってきたのは意外な人物だった。



「失礼します〜、
本日櫻井さんのメイクを担当する…」



「今井さん!?」
メイク担当の挨拶を無視するかのように昴は声を上げた。



「ちょっとー!
挨拶ぐらいさせてよ昴」


まさかテレビ局で会うとは思ってなかった人物に驚きを隠せない。
横に立つ水島を見ると得意気な表情を浮かべている。
タレントの精神状態にも気を配るのはマネージャーの役目、と緊張してる昴を気遣い今井にお願いをしていた。



「いやぁ、まさか昴が『ランチタイムでshow!』に出るとは思わなかったなぁ。ほらほら、動かないで」



グイッと首を前に向けられる。


始まって1年足らずではあるがお昼の情報番組『ランチタイムでshow!』は視聴率も良く、昴も見ている番組。



「まさか私も自分が出るなんて
思ってませんでした…」



生放送の番組で出演時間は10分少々と昴の予想以上に長い。
カメラに映ることは慣れている昴だが、生放送となると話は別。



「どうしよう…緊張してきた…」



「大丈夫よ昴。この私がメイクするんだから超可愛い姿で出れるもん!
それに出演オファーをしてきたのはあなたじゃなくて番組側でしょ?
みんなが櫻井昴に会いたがってるって話なだけじゃない」



ほーら、前向いて昴!
今井の言葉に正面にある鏡を見るとメイクは全て終わっていた。



ふわふわとした髪型は可愛らしいワンピースの衣装にとてもよく似合っている。




ね?言ったでしょ?
と言わんばかりに笑う今井。




「ありがとうございます今井さん!
行ってきます!!!」



水島と今井はそう言って笑顔でスタジオへと向かう女優を見送った。