運転手が運転する帰りの車の中、後部座席の優はあのメモを見つめていた。
「何それ?」
隣に座っている平井が尋ねる。
「嫌な奴からもらったんですよ」
言葉のわりにはその表情は少し笑っている。
嫌な奴って?と平井の顔には書かれていたが見ないふりをした。
「機嫌良さそうだね」
「そうですか?」
どうやら嫌な奴だと言いながら微笑んでいた顔は機嫌がいいと判断されたらしい。
「最近元気無かったでしょ?」と笑って平井は言った。
「青春…ならではの悩みかな?」
その何気ない言葉に「えっ」と固まる優。
「何でそれ…」
「もしかして図星だった?ごめんね」
「誰かから何か聞きました?」
真顔で優は質問をする。
「え?宮藤くん誰かに何か言ったの?」
あまりの真剣さに平井は何かあったのでは?と不安にかられた。
一方優も、そういう意味じゃ…と口ごもる。
揺れる車の中で静かな時が流れた。
優も平井も言葉を発しない。
