「彼女、いる?」
「いないです…けど…」
徐々に小さくなっていく声に合わせ藤森から目線を反らしていった。
(何なんだこの人!?)
今までほとんど関わりがなく、寧ろ嫌われてると思っていた藤森。
千秋や浪川から聞かれるのはまだわかるが、藤森にそんなこと聞かれるとは思っていなかった。
「あー、あれか、昴ちゃんか」
「はぁっ!?」
藤森が「昴ちゃん」と呼んでいたことにも驚いたし、何より今この場で彼女の名前が出てきたことにも驚いた。
「あ…」
思わず素が出てしまった優。
「あの…藤森さん、失礼なこと言ってしまってすみません」
少しずつ顔を上げると視界の端に見えた藤森は笑っていた。
「それが素の宮藤か!」
笑っていた。ケラケラと楽しそうに。
今まで苦手だった相手が。
「今まで俺が思ってたのとは違うってことね。あー、そっちの方が俺楽だわ」
「え、あぁ、そうですか?」
楽ってどういうことだよ、とはさすがに言えずその言葉を流した。
