フィルムの中の君




昴が帰ったあとも、一人座ったまま優は動かずにいた。
そこに撮影を終えた俳優陣の何名かが入ってくる。


「お疲れ優」


「みなさんお疲れ様です」


まだ残ってたのかー、早く帰ったほうがいいぞ!と口々に言われ、自販機で買った飲み物を飲み干すや否やぞろぞろと休憩所を出て行く。


「…まだ帰んないの?」


何故か優の正面にあるソファーに座った藤森は動かずにいた。


「え、あぁいや…そろそろ…」


ふーん、と興味無さそうにコーヒーを飲んでいる。


藤森がどうなのか直接聞いたことないから知らないが、優は藤森が苦手だった。
自分に対して冷たいのと話がないから会話にならない。


同じ空間にいることさえ気まずい。


「藤森さんはまだ…」


とりあえず会話しようと切り出した言葉を遮られた。


「宮藤、青春してる?」


「……は!?」


あまりにも突拍子な言葉に固まる。
予想もしなかった人物からの予想もしなかった言葉は本当に困ると優が感じた瞬間だった。


「え?いやいやいや…えっ?どういうことですか?」