フィルムの中の君




「今年初めての文化祭なんだって?」


その言葉に険しくなる昴。
「…誰から聞いたの?」


思わず口が滑った優は慌てて、
「ん?友達から」と誤魔化した。


それはどうやら信用されたらしく、そっかぁと言う昴。


「昴、誰と回るの?」


「あ…」
昴は一瞬開きかけた口を閉じ、少し間を置いたあと答える。


「友達かな。優は?」


「俺も友達かなー。初めてでわかんないこと多いから色々案内してもらおうかなって」


「それ楽しそう!」と言いながら楽譜と台本を持って立ち上がった。


「あ…もうそろそろ帰る?」


「まだメイクも落としてないし…しかも私たちずっと衣装のままだから衣装さん困っちゃうよ」


すっかり忘れていた優は自分の軍服と昴のスーツ姿を見て「そうだった…」と呟く。


「まったく!忘れちゃだめだよ」


ふふっと笑いながら優が被っていた帽子を取って手渡し、そのまま自分の楽屋へと帰って行った。