一方休憩所では今日の撮影を終えた昴が台本と楽譜を見ていた。
映画の台本ではなく…サウンドオブミュージックの舞台である。


撮影が終わり気分が晴れ晴れとしているのか撮影中よりもずっと表情が爽やかだった。


他の役者たちは撮影中のため休憩所は昴の独り占め状態。
メイクを落とさぬまま撮影が終わるや否やすぐに休憩所にやってきた。


『こんなに素敵な自然に囲まれて…
うーん、小鳥たちも楽しそうね!
なんだか私も歌いたくなっちゃった』


昴の気分はさながらマリア。


台本にはこの後『サウンドオブミュージック』の曲が入ると書かれていた。


(目を閉じると管弦楽部の伴奏が今にも聞こえてきそう…)


すっと息を吸って歌い始めた。


『鳴きわたる鳥の声は、今日もまた楽しげに
清らかに水は流れ、春を告げるその歌〜♩』


楽譜ではここからアンサンブルが入り、マリアが一人ハモりパートに移る。
ある意味でソロ扱い。


『Ah〜♩』


楽しそうに歌う「マリア」の歌に柔らかなテノールの声が入ってきた。


『Sound of music
永遠にまた』


ここで、えっ!?と振り向くと「トラップ大佐」が立ってこっちを見つめていた。