妄想ラブレター




「聞いてくれって。なぁ秋月、」



読んで陳腐だと思ったんでしょ。やっすい言葉だと。文章だと。そう思ったんでしょ。



「おれこの手紙読んで」



わかってるよ。どーせ陳腐だよ、安い言葉だよ。でもそれでも一生懸命考えたんだっつーの!



「読んで、さ……」



だからもういいから。それ以上言ったら、絶交どころの話じゃないから。マジで髪の毛むしってやるからな。



「……すげーって思ったんだって」



はい、ボコり決定!



そう思って拳を握り締めながら勢いよく立ち上がり、あたしのそんな動きに驚いた瀬戸は、びくりと身を引いた。


けど、拳は瀬戸の元へと向かう前に、行き場を失った。



ん?

あれ?


……今、なんて言った?



「すげー……?」



そう言ったよね?


んんんっ?


なにかが食い違ってる?



「……ねぇ、今なんて言った?」



握り締めていた拳は力をなくし、ゆっくりとおろした。

その様子を見て、瀬戸が小さく肩で息をしたのが見て取れる。



「だからすげーって言ったんだ」