「泣かないでよ、謝るから。ごめんね」
謝らないで。泣いてないから。
本当に涙は出てないから。
ただ、苦しいだけ。
「艶ちゃん」
困ったように猫なで声。
はぁ、と息を吐き出して、下っ腹に力を入れる。
「えりな……今日はもう、帰ろっか」
床に落とした大量の紙袋を持ち上げ、何か言いたげな表情。けれどそれを飲み込むように小さく首を振り、
「うん、わかった」
そう言った。
ごめんね、えりな。
あたしの事を思ってくれてるのはわかってる。きっとあたしの気持ちを言えば、えりなは相談に乗ってくれるって事もわかってる。
でも、あたしは臆病なんだと思う。
好きって気持ちを口にする事はこんなにも勇気がいる事だったんだね。
……少なくとも、あたしの場合は。
「えりな……」
「なに? 艶ちゃん」
「ありがと」
えりなは真ん丸な瞳をさらに丸くさせ、やがて小さく微笑んだ。
あたし達は駅まで歩いて、そこから別々の電車に乗る。
その別れ際、えりなは囁くように言葉を放つ。
「人に気持ちを伝えるってすごく勇気がいる事だし、それでも絶対上手くいくとは限らない……けどね、例えフラれてもそれは、決して失敗なんかじゃないんだよ」
それだけ言ってえりなは電車に乗り込み、あたしに向かって小さく手を振った。



