スマホから目を離したアキは、ちょっとバツが悪そうに、どこかホッとしたようにこう言った。



「……悪い、おれ用事出来た」



そして3つあった最後のひとつのマカロンをひと口でペロリと食べ、コーヒーを飲み干した。


あたしは止まっていた手を動かし、再びカフェオレを飲む。喉を潤して言葉を話す準備を整えて。



「……あ……そ、か。それじゃ仕方ないね。うん、わかった」

「いや、ツヤコが食べ終わるまでは待ってるけど」

「いいよ、悪いし。ちょっと歩けば駅もあるし大丈夫」



ギシギシと軋むような表情筋を必死に動かし、あたしは精一杯微笑んだ。



「そ? 本当に大丈夫か?」



心配してくれてるハズなのに、どこか素っ気なく感じるのは気のせいだろうか。



「うん、大丈夫だって。万が一迷ってもスマホで道探しながら行くから」

「そっか。ごめんな」



荷物と伝票を持って席を立つアキに微笑みながら、小さく手を振り見送る。


「ごめん」……そう言ってお会計を済ませ、アキは店を出ていった。