「はぁ? 照れてねーし!」



いや、照れてるよ。アキ、自分じゃ見えないだろうけど、顔真っ赤だからね。日の光を浴びて明るく光る君の髪よりもチカチカするほどに顔が火照っているからね。



「一途だねぇ、アキちゃん」

「違うって言ってんだろーが!」



アキの拳がカンの溝落ちにクリーンヒット! ……かと思いきや、リーチのある体はその拳をするりと避け、逃げるようにその場を立ち退いた。



「照れちゃって、か・わ・い・い」

「殺す!」



身の危険を察知したカンは駆け出した。その後ろを全速力で追いかける、今は耳まで真っ赤なアキ。


嵐のような2人が教室を飛び出していった後、あたしの席は一気に静まりかえる。



……アキの好きな、先輩か。一体どんな人なんだろ。先輩ってこの学校の人なのかな。それとも中学の時からの先輩?



さっき落としかけたミートボールを箸の先で突っつきながら、転がす。それを口に運ぼうとして、やっぱりやめて、もう一度持ち上げる。


けれどそれが口の中に運ばれる事はなかった。


まだ中身の残ったお弁当の蓋を閉じ、そのまま机に伏せて目を閉じた。



「なーんだ。ちゃんと好きな人、いるんじゃん」



口の中でそう呟いて。