「ねぇ、みて!あの救急車!すごくない?」

うわさどおり、完全に騙されて救急車をよんだのだろう。

どこからか、ピーポーピーポーというサイレンが聞こえる。 

「みえねぇよ?どこにいるんだ?救急車...」

「もぅ、今日コンタクトしてないの?ほらっ、もうすぐそこの道、くるよ!」

すると角をまがって、おばあさんのもとにきたのは、わたしが知っている救急車ではなかった。

紫色のワゴン車、しかも痛い!
確かに、サイレンとか赤いラインとか入ってるけど、その車には、ネコミミのメイド服を着た女の子が描かれていた。

「これが世にいう痛車ですか、蘭さん。」

す...すげぇ

もともと、アニメ好きなわたしは興奮が隠せなかった。

しばらく様子を陰から見守ると、

おばあさんは、近づいてきた救急車に気づいて逃げ出している!

騙された人は、呆然と立ち尽くす。

救急車「あの~、すみませ~ん。逃げられても困るんですけどー。追いかけっこしたいんですかぁ~?」 

スピーカーから聞こえてきたのは、若い男性のかったるそうな声だった。