「はい。これが三崎さんのタイム」
「はぁっ、はぁっ……ありがとう」
息がなかなか整わないままタイム計測をしていた人のところにのろのろと歩いていくと、タイムが書かれた用紙の一カ所を指でトントンと触れて教えてくれた。
順位は相原君、もう一人の男の子、私、スタートの時に話しかけてくれた女の子。
私が最後になると思っていたから驚いた。
「三崎さん速いね。私追いつけなかったー」
「ううん。そんなことないよ……? ――でもありがとう……」
いつもなら途中で疲れて速さが落ちるけど、今日は相原君が引っ張ってくれたおかげだと思う。
何だか自分じゃないみたいで嬉しいような恥ずかしいような気持ちに私は我慢することなく頬をゆるめた。
すると今話していた彼女が目をまん丸にしてハッと息をのむような音がしてどうしたのかなと心配になる。
「具合悪くなった……?」
「――可愛い!」
「えっ? わ……っ!」
目を大きく開いたと思ったらギュッと抱きつかれてビックリした。
香水か何かの甘い香りがしておしゃれに気を遣ってるのかなと思っていたら彼女は抱きついたまま顔を上に向けてくる。
「今まで三崎さんってクールな人かと思ってたけど可愛い人なんだね」
「え……」
「どっちもありだけど今日話せてよかったかも。同じクラスでも今まで話すことなかったし。一年間よろしく!」
抱きついていた体を離した相手は笑って手を差し出してきた。
イメージと違うと言われたけど、どちらでもいいと言われてホッとしている自分がいる。
目の前ではっきりとイメージと違ってもいい、そう言って笑顔でよろしくねと続けてくれたのは香奈恵ちゃん以来の人で。
差し出されて握手をした手は私のほうが少し大きかったけど今は気にならなかった。

